逃源郷

世界は闇なのか

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『ブロークバックマウンテン』

今年度アカデミー賞で大方の予想を裏切り、オスカー作品賞を逃してしまった作品。監督は、『いつか晴れた日に』のアン・リー。
同性間の恋愛劇という、アメリカ映画には珍しい題材を扱っているこの作品。2人の男性の関係を、その周囲の人間模様も絡めておよそ20年に渡って描いている。

羊の放牧管理の仕事を通して生活を共にすることとなったイニスとジャック。厳しいキャンプ生活の中で助け合っていくうちに、芽生える2人の友情。それはやがて固い絆へと変わっていくのだが、この辺り2人の関係性が緊密になる動機付けが今イチ弱い気がした。イニスが異性愛者(いや、見方によっては両性愛者、もしくは潜在的同性愛者)で、ジャックが真性の同性愛者であることは容易に判別できるのだが、なぜ異性愛者であるはずのイニスが、ジャックに心を許したのかが到底理解できない。だから、2人がテントの中でいきなりSEXを始めたのには、あまりに唐突過ぎて違和感というか疑問符が沸いてしまった。まして同性愛という言葉自体が世に浸透していないだろう保守的な時代に、何故イニスはアナルセックスの仕方を知っていたのだろう。こうした違和感から、2人の関係性に感情移入出来ないまま、物語が進んでいったのがとても残念だった。

中盤は、お互いの家族関係が交互に描かれる。この辺り、2人の関係性に同情が向くように作られているようでならなかった。2人は家庭の中で抑圧されているのだ(特にジャックが)。しかし見方を変えて妻側の視点に立ってみると、男性2人ばかりを擁護するわけにもいかなくなる。妻は、夫に存在をないがしろにされているからだ。妻からしてみれば、イニスとジャックの関係はただ家族をないがしろにして、自己の安息に身を委ねた現実逃避にしか写らないだろう。イニスの妻が、夫の帰りを子供たちと待つシーンは、心苦しいものがあった。

生きることは、戦うことであるといわれる。2人にとって、家庭は必ずしも安息できる場所ではなかったのかもしれない。男性は家庭を持って、家族を養わなければならないという、強い倫理規範に縛られていた保守的な時代。それに相反する2人は、ブロークバックマウンテンという理想郷で一時の至福を保つしかなかったのだろうか。

また、家族を養わなければならない社会的使命感と、個の自己実現との間で揺れ動くイニスの姿も見逃せない。ジャックはどちらかというと、家族の関係性が希薄なせいか、自らが同性愛者であることにオープンである。つまり、個の自己実現に重きを置いている。どちらを大事にすべきか揺れ動いた末、結局家族とジャックの両方ともを失ってしまうイニスの不器用な生き方は、観ていて心苦しいものがあった。

つまるところ、この映画は単純なありふれたラブストーリーなのだと思う。2人の間に立ちふさがる障壁が、これまであったような人種や階級とは違い、それが同性同士であるということだけで、ようは単純なラブストーリーなのだと思う。

またこの映画は、『ミリオンダラーベイビー』や『海を飛ぶ夢』が尊厳死の是非を問うたように、同性愛は倫理規範として認められるかを投げかけた作品であるとも思える(監督にそういった意図はあまりないようだが)。イギリスでは、同性婚を認める法律ができた。映画は倫理に革命をもたらす力があると、自分は信じている。この映画によって、同性愛者(いやすべてのセクシャルマイノリティーズ・LGBTI)達への差別や偏見がなくなることを、切に願うばかりである。


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  1. 2006/04/01(土) 06:06:04|
  2. 映画(劇場にて)|
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