今年のカンヌで名前を知ったこの監督の映画をはじめてみた。まったくといっていいほど無名で、超低予算であろう映画にもかかわらず、緒方拳や香川照之などの有名な俳優がでているし、よくできている作品でもあった。そのカメラワークも独特で、基本的に引きの画と役者の顔のアップの画面で構成されている。しかもなぜか全編声がアフレコで収録されている(多分。声と口に戦隊もののように違和感があった)。
内容としては、北海道の片田舎に住む家族の事情を淡々と描いている。妻を亡くして寂しさつのる老人緒方拳と、彼と2人きりで過ごし彼の面倒を見ている次男、そして家族を捨ててミュージシャンの道を志すが、半ば希望を見失っている長男。家族の崩壊という、ともすれば重くなってしまいそうなテーマだが、作り的には軽快な音楽と重く苦しい現実をあざ笑うかのような役者の演技で、コメディ仕立てになっている。苦しい現実なんて笑い飛ばしてしまえばいいんだ、と思ってしまった。
父親は父親で、妻がなくなった3回忌直前に、なじみの女性に会うために歩いて遠く離れた地に通っている。人の助けを借りないと、生きてはいけない老いの悲しみを感じた。だから、せめて好きな女性と会うときだけは人の助けを借りずに、ひたすら雪の中を歩いて行ったのかな。最後、次男がかぶせようとするジャケットをひたすら拒もうとする父親の姿は、男の意地とプライドを感じさせてくれた。
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